そう言いながら、その女性は私に向かって名刺を差し出した。 名刺には 藤枝 莉々子と書いてあった。
思わず圧倒されてしまった理由は、その女性がいかにも大人の女性で仕事をばりばりとこなすキャリアウーマン風だったからだ。
嫌味なくパンツスーツが似合っている、足の長い長身の女性だ。 髪もふわふわの巻き髪が似合っていて、すっきりとした目鼻立ちの美人さんだ。
「蛯原です…。よろしくお願いします。 えっと…今日は店舗の責任者はお休みで……」
「ええ、窺っているわ。marinの事務仕事は蛯原さんが一任されているって聞いてたから、一度ご挨拶をしようと思っていて
こんなに若くて可愛いお嬢さんだったなんて、びっくり…!」
「いえ…そんな……」
一目見た瞬間から苦手な部類の女性だと感知した。
私は女性に嫌われやすい。 梓さんが例外で可愛がってくれているようなもので、サバサバ系の大人の女性には特に嫌われやすい。
ボヤージュの本社でバリバリ仕事している女性なんて、気が強いに決まっているんだから!
「あの、じゃあ…あお…小早川さんは担当から外れるんですか?」
名刺と彼女を交互に見つめながら言うと、藤枝さんはさりげなく碧人さんのスーツの袖を掴んだ。



