【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


「本社から?碧人さん来るって言ってたっけ?」

まあ、碧人さんとは最近口も利いていないけれど
寧ろ伊織さんが新婚旅行やら何やら言っていて最近は忙しそうだ。

marinのオープンの評判が良いのもあってか、さっそく本社では都内に系列のカフェをオープンしようと話が上がっているらしい。

それはいつか碧人さんからひっそりと聞いた事があった。

「小早川さんだけじゃないの。初めて見る顔なんだけど、きっとあの人ボヤージュ本社の人だと思う。
私お茶を淹れてくるねッ」

「へー……分かりましたあ……」

梓さんがお茶を淹れに行ってから数分後、碧人さんが一人の女性を連れて事務所にやって来た。
二人は仲良さそうに寄り添い合いながらやって来たので、一瞬びっくりしてしまう。
碧人さんは会社や人前で見せる営業スマイルを振りまいていた。

「お疲れ様です。 本社からやって来た藤枝(フジエダ)です。
夏にmarinの支店を出す事が決定して、ここの店舗の新しい担当になりましたので挨拶に来ました。」