【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


それでもいつかは出ていなくちゃいけない。
三姉妹や小早川家に甘えていちゃいけない。
長くいればいる程、きっとこの家を出て行く時に寂しくなるに違いない。

寂しくなりたくない。 私は私の居場所を見つけて、また前のような生活に戻って心を楽にするんだ。

愛情に執着したっていい事は何も起きないのだから。

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「蛯原さん、今日も可愛いねー。今度デートしよー」

「またー誰にでもそういう事言ってるんでしょう?」

うふふと極上の営業スマイルを浮かべる。
春が近いせいか、皆浮足立っている気がする。
marinの常連さんの男性のデートの誘いをさらりとかわしながら、今日も仕事に励んでいた。

「蛯原さん、ホールには俺が出るから裏の事務仕事お願い出来る?」

「はぁい!了解でぇす!」