【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


「何言ってんのよー。碧人さんは桃菜が自立したら安心するってば。
それに真白、小早川家に桃菜が来たばかりの頃はすっごく怒ってたじゃない~
早く出てけーとかあお君に手を出すなーとか騒いでたくせに
案外あんたが一番寂しかったりして」

ケラケラと笑いながら言うと、真白はやっぱり怒った素振りを見せる。
顔を真っ赤に染めて、フンッと勢いよく鼻息を鳴らす。

「別に寂しくないけど?! 部屋が狭くなってマジでムカつくから、早く出て行ってくれた方がせいせいするけどね」

「もぉ~素直じゃないんだから~~実は桃菜が居て嬉しい癖に」

「フンッ。あんたがいると家事が分担されるから、楽っちゃ楽なのよ。
それに春からは華の女子高生だしね。
あ~、あんたみたいに使える女がいなくなるのは困るわあ~」

「人をパシリみたいに言わないで!」

寂しくないと言えば嘘になるのかもしれない。

台風が来たら吹き飛んでしまいそうなボロ屋にも
せまっ苦しくて畳み臭いこの家にもいつの間にか愛着がわいてしまうっていうものだ。 人と深くかかわり合うなんて面倒くさいだけだと思っていたのに。