けれど小早川家での料理は義務や誰かに自分を良く見せる為にやっているわけではない。
ただただ単純に嬉しい。
真白達が桃菜ちゃんは’料理’だけは上手だと余計な一言を言ってくれるけど、それも嬉しいもので
碧人さんに美味しいと言われるのはもっと嬉しかった。
「あお君最近忙しそうだね。伊織君がこの間まで新婚旅行に行っててその代わりに本社にも顔出す事が多かったんだって」
「真白、塩コショウ取って」
「ほい。 最近すっごく忙しそうで心配。
今日も夜ご飯外で食べて来るって言ってた」
真白の手から塩コショウを受け取って、ひき肉に振りかける。
「ハンバーグってどうして丸めなくちゃいけないんだろうね…ひき肉を炒めてそのままソースで味付けしたって美味しいじゃんかね。
このひと手間が面倒臭いよね」
真白と私の話は全くかみ合っていない。 私が碧人さんの話題をスルーしているからだ。
その様子を見て、真白はひき肉をこねながら大きなため息をつく。



