まだまだ眠気眼だった藍は、台所に居た真白にぎゅっとしがみつくように抱き着いた。

性格は甘えん坊。家族相手だとお喋りだけど、私に自分から話しかけてくる事はない。 まあ、楽っちゃ楽だけど。

女の子との関係を築くのが苦手な私だけど、自分とは10歳以上も離れている子となればそこまで苦手意識はない。

寧ろ畳み臭い小早川家に馴染んできたと思う今日この頃。 家庭とはこんなに賑やかなものだったのかと感心してしまう。

この家には、私が幼い頃にどうしても欲しかったけれど手に入れられなかった全ての物が詰まっているようで、眩くて時たま目が眩みそうになる。

「じゃあ、仕事行って来るぞー」

「お父さん、お弁当ちゃんと持っていってね~?
藍も早く着替えておいで~?今日の洋服昨日用意しておいたでしょう?」

朝一番忙しそうにしているのがまだ中学生の女の子っていうのが可哀想な所だけど。
台所で洗い物をしている真白から食器を洗うスポンジを取り上げる。