桃菜ちゃん……そう藍が声を掛けて近寄ってきたのが分かった。
それを避けるように碧人さんの横を通り過ぎて、自分の部屋に戻る。
布団を取り出して床に敷くと頭から毛布をかぶり枕を両手でぽかすかと殴る。

どうせ私は碧人さんが思っている通りの嫌な女だ。 今までの過去だって親友だと思っていた真凛ちゃんを傷つけて男達を弄んできた。

そういう性格が易々と変わるだなんて思わない。

’早くここから出て行こう’ 小早川家で過ごして、この家の住人になった気でいても、所詮は他人。いつか離れ離れになる日が来る。

ここで過ごす時間がどれだけ楽しくとも、いつか終わりは必ずやってくるのだから。
その日にいつでも情なんて捨てれるように、いつだって身軽な自分でいなくてはならない。