「今日は瀬能くんとデートの日じゃなかったのか?」
「ひぃいいいい!!!
ちょっといきなり後ろに立たないで下さいよぉ!!」
低い声が響くと、大きな影が出来る。
後ろに立っている碧人さんはやっぱり不機嫌そうで、いつも以上に感じが悪い。
ふいっと視線を背け、買ってきた食材を冷蔵庫に閉まっていく。
「真白とは偶然映画館で会ったようだな。 真白は友達と映画に行っていたが、桃菜ちゃんが男の人と映画に来ていて偶然会ったと聞いている。
この間話していた瀬能くんの事だろう?」
真白め……。 自分だって男と映画に行ってたくせに私の事だけを売りやがって。
「はぁー、まあー……誘われたんで」
「はぁ…誘われたらどんな男の所でものこのこついていくのだな。
そういう所全然変わらないな」
深いため息とともに放たれた言葉に思わずピキリとキレそうになる。
’どんな男の所でも’ですって?
’のこのこ’ってどういう意味よ。 大体この間っから嫌みったらしいったらありゃしない。
振り返りキッと碧人さんを睨みつけると、彼が一瞬怯んだ。



