「あ?なんで俺がお前なんかと」

「いーじゃん。俺2人のファンなんだよね」

「…嘘くせえ」

「ひっどいなあ、ゆりちゃんはどう?」


あたしに振られても。

どう答えようか迷っていると、肩に載せられた手がぎゅっと力を込めた。



「と、もだちは…ちょっと………」

「えー?ひっど、傷ついたー」


言いながらへらへらと笑うその男は、全く傷ついているようには見えない。

ウェーブを描く長めの黒髪の間から覗いた目は、真っ黒だった。

この目、やっぱりどこかで見たことあるような気がする。



どこだったっけ…?


「ゆりちゃん」

不意に名前を呼ばれて顔を上げると、真っ直ぐにあたしを見る目と目があった。


いや、あたしのことなんか見てない。


この子、どこ見てんの?


「絢くんと仲良いみたいだねぇ」


こてんと首を傾げたその顔は、口はだけしか笑ってない。


この子の癖なんだろうか、口だけで笑うの。


「まぁいいや。
友達になれなくても」


あっさりと諦めたその子は、テーブルの上に置かれていたお冷をちびちびと飲んでいた。


そういえばあたし、この子の名前も知らない。



「ねぇ、キミ名前は?」

「おい柚璃、」

「…………ヨル」

「よる?」

「うん、ヨル」


そう言って、またへらりと笑った。