どうしよう。

もちろん絢くんの顔に何かついている訳もなく、

“何もついてないよ“

ただそう言ってしまえば良い話。


なのにあたしの口は全く動かず、代わりに恐る恐る動いたのは手だった。


つるりとした頬を指先でつっ、と触る。


その瞬間、伏せられていたはずの瞼が大きく見開いた。





「…あっ、ごめ、」


熱湯に触れたみたいな衝撃が指先に走った気がした。

弾かれたみたいに指を離す。


勢いよく離れた手を受け止めたのは、絢くんの大きな手だった。


大きくて、ごつくて、熱い。


初めて触れたわけでもないのにカッと顔に熱が集まっていくのを感じる。



「…なあ、マジでなんなの」

「え?」

「俺の事子ども扱いするくせに、
最近やけに俺の事見るし
……おまけにこんなふうに触るし」


ぎゅう、と手を握られて悲鳴をあげそうになった。

鏡を見なくても自分が今どんな顔をしてるか分かる。

茶色い目が、そんなあたしを捉えて離さない。



「俺のことどう思ってんの」