「お前、まさか」

「…………」

「まさか、」



まさか、何よ。

そう言ってやりたかったのに声がつっかえたように出てこない。


答える代わりにゆるりと首を振った。

そういうんじゃない。


ただなんとなく、嫌だっただけ。


なんの抵抗もせずに、あの子に腕を自由にさせていた絢くんが

知らない人みたいに見えた。


普段お客さんに接する時とは違う彼を見て、少し戸惑っただけだ。


我ながら意味不明な言い訳を心の中でしながら、違う違うと誰に言うでもなく繰り返した。



「あの子、まだ高一…16歳だろ?」

「そうだよ」

「そうだよ、って…っ」


そこまで言って口を閉じた佐倉は、
あたしの顔を覗き込んで言った。





「柚璃、俺ら付き合おう」


「………は?」