「ちょ…やめたまえ」
「…やめたまえ?なんだその変な言葉遣い…」
「手、離してよ」
「顔上げたら離す」
ああいえばこう言う。
絶体絶命とはまさにこのことか。
どうしようかと考えている一瞬の隙をついて、絢くんの指があたしの顎をなぞるようにして顔を上げさせた。
「あ、あ、何今の速技…どこで習ってき」
「…顔真っ赤。」
ポツリと呟いた絢くんの言葉に頭を抱え込みたくなった。
4つも歳下の男の子のすることに、こんなに惑わされるなんて。
恥ずかしすぎる。
「…気のせいよ、てか見なかったことにしてお願い」
「ヤダね。初めてこんな顔見た」
言いながら身を屈めてあたしの顔を覗き込む絢くん。
発狂しそうなくらい顔が近い。
「だー!だから近いって…」
「目に焼き付けとこうと思って」
人の弱みを握ろうとしてる?
面白がってるのか、と文句を言おうと視線を目の前の顔に移して言葉を失った。
「柚璃、照れてんじゃん」
照れたような、嬉しそうな顔でくしゃりと
笑ったその顔に
目が釘付けになるってこのことか、と
心のどこかで冷静なあたしが呟いた。

