当の本人は何を考えているのか分からない顔のまま、あたしをじっと見つめている。
もうやめて欲しい。その目、その顔。
「さ、さぁーて…帰るかぁー」
誤魔化すように伸びをしながら言った言葉は誰が聞いても裏返った声で。
動揺しました、と言っているようなもんだ。
自爆しながらもなんとか絢くんに背を向けて更衣室へ向かった。
更衣室のドアを閉めた瞬間、へなへなと腰が抜けた。
床に座り込んだまま、さっきの絢くんの目が勝手に思い出されてしまって、
顔がかっと熱くなる。
いつもは子どもみたいにぱっちりした目なのに、なんかさっきは違ってて。
伏せられたまぶたにうっすらと二重の線が入って、それがやけに色っぽくて。
色っぽ、い?
「いやいやいやいやいや今のおかしいおかしい…違う違う…」
落ち着け。相手は16歳の少年だ。
あたしは20歳のおばさん、そう、おばさんだ。
こんな時に彼の悪態が役に立つとは思わなかった。
そうだ、あたしはおばさんだ。
そう言い聞かせると、すぅっと頭が冷えて行く気がした。

