意地っ張りな恋の話




気づけば絢くんの腕をぎゅっと掴んでいて、

守るように背中に隠していた。


この子を渡しちゃダメだ。


考えるよりも先にそう思った。



「ちょ、何してんだよアンタ…」

「絢くんは黙ってて!
…嘘ついてすみません、あたしはこの子の知り合いです」

「知り合い?ただの知り合いなワケじゃないんでしょ?
秘密にして優越感でも感じてるわけ?気持ち悪い女」


振りかぶられた手に対抗する間もなく、頬に鋭い痛みが走った。

あたしを憎悪の眼差しで睨みつけるその人の爪が、血で濡れているのが見えた。


「っ、アンタほんといい加減にしろよ!!!警察呼ぶからな、二度と俺の目の前に現れんな!!!!」


低い声で威嚇するように怒鳴った絢くんは、
そのままあたしの腕を引いて足早に歩き始めた。



頬が濡れている感覚がする。

遅れてやってきたジンジンとした痛みに、
引っ掻かれたのだと自覚した。