「柚璃にはさー、ほら…佐倉さんとか、大人の男の知り合いとかたくさんいるし
俺のこと、子どもだとか…思って嫌になることとかあんじゃないかと思って」


かっこわる、今のナシ。
頭をがりがりと乱暴にかきむしった絢くんは、さっさとあたしを置いて先を歩いた。

今のナシ、って

ナシにできるわけないじゃん。


少し前を歩く背中に小走りで近づいて、
容赦なく抱きついた。


「うお、
びっくりした…」


ぴたりと背中に耳を付けると、どんどん早くなっていく鼓動がダイレクトに伝わってきて少し笑ってしまった。


「何笑ってんだよ」

「…べつに、笑ってないよ」

「…にやけてんだろ。声で分かる」


はあ、とため息をついた絢くんが続ける。


「…俺のこと子どもだって思ってんだろ
そーだよ子どもだよ、今だって余裕なくて、」

「ごめんそういうのいいの、違うの」

「は?」

「あたしもなの。あたしも絢くんと一緒。自信とかなくて、あたしなんかといつまで付き合ってくれるのかなとか毎日思ってんの」