意地っ張りな恋の話



「いい加減にしろおおおーーー!!!!」

ばきり、と音を立てて彼女の頬にあたしの拳が埋まった瞬間、
じゃきりと嫌な音がした気がした。


ぱらぱらと地面に落ちていく髪の毛はあたしのもので、気づいたらお姉さんの手に握られていたハサミで髪が切れてしまったらしい。

でもそんなのどうでもよかった。


ふざけんな。
弟の気持ち、なんだと思ってんだ。


「な、何すん…」

「何させてんだはこっちのセリフ!!弟になんてことさせてんのよ!!おまけに大怪我までさせて!!!!」


血を流し続けるヨルくんの手首を掴んで、立ち上がらせる。
早く手当てしないと大変だ。


「あ、アンタなんなの?こっち見なさいよ!!」

「今あなたに構ってる暇はないので!!!!
帰っていただいてもいいですか!!!」

「…っ、あたしにはもう絢しかいないのよ!!もう、絢しか…」

「本当にそうですか?」


あたしの言葉に呆然とした顔を上げたお姉さん。

きっとこの人は今、視野がものすごく狭くなっているだけなんだと思う。

ちょっと見渡せば、″絢しかいない″なんて思わなくなるはずだ。