頭に回った手が、ゆっくりと髪を撫でる。

ただその行為だけで頭がくらくらした。


バイト中絢くんが通り過ぎるたび香っていた柑橘系の香りに包まれて、

自分が今どんな状況なのかを理解して頭が真っ白になった。


何か話さなきゃ。

真っ白になった頭の中をフル回転させてなんとか声を絞り出す。


「み、」

「み?」

「未成年淫行になっちゃう」

「…言うに事欠いてそれかよ」


この状況わかってる?
そう言いながらぎゅうっと腕に力を込められて、泣きそうな声が出た。


とんでもない状況だ。


このとんでもない状況なのに
あたし、今までにないくらい幸せな気持ちになってしまってる。


離さないでほしいと、ずっと抱き締めてて欲しいと願ってしまっている。