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「うっわー…すんごいねこれは」
ヨルくんが引いたような声で呟く。
その横であたしも全く同じことを心の中で呟いていた。
絢くんのクラスの″執事喫茶″に向かうと、廊下まで行列が出来ていて。
その行列の先にだれが居るかなんて愚問だ。
「絢くんってやっぱすんげえモテるんだねぇ」
感心したように言うヨルくんにも周囲の女の子からの熱い視線が突き刺さってるんだけどね。
本人は全く気にしていない様子で廊下を進んでいく。
「ちょ、ヨルくん…みんな並んでるみたいだよ?」
「えー、だって絢くんのために並ぶとかなんか嫌なんだもん」
なんか嫌、の意味がよくわからないけど、
とりあえず彼はこの行列に並ぶようなことはしたくないらしい。
行列の先がやっと見えてきた。
その先にいたのはもちろん、燕尾服姿の絢くんだった。
「みーっけ」
「…忙しそうだね」
「ほーらまたその顔……ゆりちゃんわざとやってる?」
困ったような顔であたしの頬をつついたヨルくん。
また変な顔をしてたらしい。
慌てて頬に手を当てて普通の表情に戻そうとするけど、普通の顔ってどんな顔だっけ。
そんなことを考えていると、
絢くんがあたしたちの方を見ていることに気がついた。

