あたしたちの横を通り過ぎていく学生たちは皆楽しそうに顔を綻ばせていて、
ヨルくんもそんな学生のうちの1人のはずなのに。
どこか馴染めていないような気がしてならない。
「俺にはねえちゃんしかいないんだよねぇ」
ぽつりと呟いた言葉。
耳を澄ませていないと聞き流してしまいそうな細い声だった。
「親なんていないも同然だったから
ねえちゃんのおかげで今俺生きてんの。
だからねえちゃんのためならなんでもする、」
そこまで一息で言って、ちらりとあたしを見る。
その真っ黒な目を見つめると、ふいっと視線を逸らされた。
「…って思ってたんだけどなあ」
はぁ、とため息を一つついて、
あたしの頭をぐりぐりと撫でた。
あたしは犬か。
「ちょっとあたし歳上なんだけど?なによこの手は」
「ゆりちゃん歳上って感じしねぇもん」
言いながらケラケラ笑うヨルくんは、
さっきまでの顔はなんだったんだと聞きたくなるくらいに年相応の顔をしていて。
少しだけホッとしてしまった。

