もうすぐ暑い夏が来る。嫌いな季節。

 一番古い記憶、母と別れたあの日。

 『ここで待っていて』

 その言葉を信じて待って、待って、待ってやっと捨てられたと分かった時は、もう涙も出なかった。


 それからの私は周りと色々違うと教えられた、新しい服も当たり前に買えない、食べたい物も食べられない。


 テレビも自由はない。新しい本を読みたくても買えない。



 施設での生活は私から色んな感情も奪っていった。だから、優しさ、甘え、その他の感情も私には分かりにくい。



 イヤ、自分には生きてく上で必要無いと悟り捨てたのかもしれない。


 でもあの医者はそんな私の心に勝手に入ってくる。


 担当医だからかも知れないけど、命を助けて欲しい思っている人の所へ行けばいいのに。


 私はお願いしていないのに、勝手に来る。