私は改めて王子を見る。
あの頃とは違う。
あの頃の楓くんは背が私よりも低かった。
なのに、今は私が背伸びをしても届かない。
公園で泣いていた楓くんという弱々しいイメージもなくなっていた。
たけど、一つだけ変わっていないところがあった。
それは楓くんの目だった。
青みのかかった茶色の目。
引き寄せられるような目。
それだけは変わっていなかった。
そして、その目が楓くんの可愛さ、カッコよさを引き立てている様だった。
「楓くん、だよね?」
私がそう言うと楓くんは目を輝かせた。
「風菜、覚えてくれてたんだ」
「もちろん」
「嘘つかないで。今さっきまで、意味分かんない、みたいな顔してたじゃん」
「あ……バレた?」
『まったく風菜は〜』そう言って笑う楓くんの顔には公園で一人泣いていた彼の面影があった。
でも、それは笑顔だけで泣きながら顔を歪めた楓くんの面影は残っていなかった。
楓くん、元気になったな〜。
私は嬉しかった。
楓くんが明るくなったということあと……
「風菜、僕約束守ったよ」
ずっと前にした約束を覚えてくれていたこと。
「うん」
「だから……
楓くんが私の肩を掴んできた。
そして、
「僕と結婚してください」
そう言って私の額にキスをした。
「ど、どどどういうこと?」
パニックに陥った私を見た楓くんは肩から手を離し私の手を握った。
そして楓くんがしゃがんで私の目をしっかりと見た。
「風菜と結婚したい。」
「なんで?」
久しぶりに会ったばかりなのに……。
「ずっと前から、風菜のことが好きだったんだ」
真っ直ぐに見つめる楓くん。
「でも!私って普通だよ。可愛くもないし…」
「いや、風菜は可愛いよ」
顔があつい。
いつの間にそんなかっこいいこと言えるようになったのだろう。



