『楓くん、どうして落ち込んでるの?』
幼い私は公園のブランコに座っている彼に声をかけた。
お母さん同士の仲が良かった私達は、当然のように遊んで、当然のように一緒に居た。
彼はいつも泣いていた。
見た目のせいで保育園でいじめられていたから。
『やーい、お前の目、俺らと違う〜!』
『なんだよ、その目』
彼の目は青みがかかった茶色の目をしていた。
私はそんな彼の目が好きだった。
目を見るだけで彼の目に吸い込まれそうになるほどきれいだったから。
公園で『私は好きだよ。』そう言うと涙で濡れた顔をクシャッとして笑ってた。
こんな日常が続くと思っていた。
ずっと一緒に居られると思っていた。
きっと彼も思っていただろう。
だけど……
『風菜…僕、遠くに引っ越しちゃうんだ』
『そんな……?!』
ちょうど私達が保育園を卒園して小学生になる
頃、彼が遠くの街に引っ越すことを知った。
お母さんが車で行くことが難しいくらい遠い場所と言っていた。
いつも一緒に居た、遊んだ。
まるで家族のように過ごした彼と離れるのは私を絶望させた。
悲しい、離れたくない、一緒に居たい。
そんな気持ちが私の胸を支配した。
泣きそうになった。
だけど、涙をこらえた。
泣いていた彼を慰めていたのは私だったから、元気づけたのは私だったから。
泣いたらきっと彼は私よりも泣くだろう。
涙を必死にこらえている彼を見てそう思った。
私は彼の方へ手を出した。
笑って
『楓くん、ゆびきりしようよ』
『……え?』
『いいから、いいから。手、出して』
彼は鼻を鳴らせながら私の方に手をつきだした。
『ゆ〜びき〜りげんまん』
『あ…ゆびきりげんまん』
ボソボソと彼もおまじないを唱える。
『大きくなったら絶対、会おうね!』
私がそう言うと彼は目を輝かせた。
そして首を大きく縦に振って
『もし、会えなかったら針千本の〜ます!』
『『ゆびきった!』』
そういえば二人で約束したんだっけ…。



