「咲、おはよ」
「おはよう!」
学校について、時計を見る。
あと少しで遅刻だった……。
「珍しいね、ギリギリなんて」
「そうだね、色々あって」
机の上にかばんを置き、椅子に座る。
「色々って?」
咲が興味津々に聞いてくる。
「色々だよ」
暑い……。
自転車のペダルをいつもより速くこいだせいなのか、額に汗がじんわりとにじむ。
制服の一番上のボタンを開け、タオルで拭う。
「……え、風菜」
咲の戸惑っているような声が聞こえた。
「ん?」
「首、キスマーク凄いよ」
顔がかぁっと熱くなる。
『風菜は僕のものだって、たくさん分からせてあげる』
キスマークが首にあることを鏡で見たり、思い出すたびに、私はきっと楓くんのことを考えてしまう。
「誰につけられたの?」
ボタンを素早くしめて、授業の準備をする。
「さぁ」
あえて、とぼける私。
そんな私を見てなのか、耳元に口を近づけて小さな声で
「楓くん、でしょ?」
ニタニタしながら、つぶやく。
何で知っているのか、私には分からない。
咲にも、誰にも伝えていないはずなのに……。
「な、なんで?!」
「その顔、絶対そうでしょ」
「ちが…
慌てて否定しようとした瞬間、学校のチャイムが鳴った。
「あとで、詳しく教えてね!」
咲の表情は、もう確信しているような表情をしている。
絶対勘がいいからバレた………。
『つりあわない』、『何であの人が?』、そう言われるのが怖くて隠そうと思っていたけど咲になら言ってもいいかもしれない。
きっと、祝福してくれるよね。



