【風菜 side】
楓くんにキスされそうになったとき、嫌じゃなかった。
してほしい、と思った。
だけど、楓くんとのキスは気持ちが通じ合ったときにしたいから。
家から出ようとしていた楓くんの袖を掴んでリビングへ移動する。
「風菜、今さっきのこと、ほんとにごめん」
後悔しているような、そんな顔をしている楓くん。
きっと、私に何かを言われることを覚悟しているのだろう。
下を向いている。
伝えるのは今しかない、そう思った。
「楓くん、好き」
「え、うそだ」
「ほんと、大好き」
楓くんは目を大きく開いて私を凝視している。
「僕のいう好きって恋愛感情の好きだよ?」
私の想いは楓くんに届いていない。
私だって、楓くんと同じ好きだ。
楓くんと一緒にいればいるほどドキドキして、どんどん好きになっていく。
「楓くんの好きと私の好きはきっと同じ。一緒に過ごせば過ごすほど、ずっと一緒にいたいって思うの」
楓くんの手を掴む。
楓くんとずっと一緒に過ごしたい。
たとえ何があっても楓くんとなら立ち向かえる。
沢山の気持ちで胸がいっぱいになる。
「この先、辛いこと、悲しいことがあったとしても私は楓くんとなら何でもできる気がするの」
楓くんの手をぎゅっと握る。
……届いて、この気持ち。
「私と一緒にこれからも、その先もずっと一緒にいてくれませんか?」
楓くんに腕を引っ張られて抱きしめられる。
「……風菜とずっと一緒にいたい。大好き」
鼻をすするような音がしている。
背中に手を回してぎゅっと抱きしめ返す。
「楓くん、キスしよ?」
「うん」
手をつなぎ、指をからめ顔を近づける。
「風菜、好き。大好き」
「私もだよ、楓くん」
『好き』を伝えあってからするキスは甘くて、幸せで、最高のひとときだった。