「ど、どうしたの?」
あの後、僕は風菜の腕を引っ張って家へ帰った。
そして次は後ろからではなく、正面から抱きしめている。
「風菜は水無瀬くんが好き?」
僕は風菜の首元に顔を埋める。
「か、楓くん……くすぐったい」
顔を見なくても焦っているのが声で伝わる。
もう、これ以上したらだめだ。
付き合うまで風菜に手を出さないと決めた。
大事にしないといけない。
だけど、
「……ん」
風菜の首元を噛む。
噛んだところは赤くなり、キスマークが出来ている。
僕は抱きしめるのをやめ、風菜を見つめる。
風菜の顔は真っ赤で上目遣いをして僕を見る。
……もう、無理だ。
大切にしたい。
好き。
風菜の気持ちを聞いてからじゃないと。
愛しい、可愛い。
僕の心のなかにたくさんの感情が混じってごちゃごちゃになる。
無意識に風菜の唇に僕の唇を近づける。
「楓くん、待って」
風菜の焦ったような声で我に返った。
僕、最低だ……。
「……ごめん」
風菜も僕みたいなやつと一緒にいたくないだろう。
靴を履いて玄関の扉を開けようとした。
「楓くん、お話があります」
風菜に袖を引っ張られる。
僕、振られるんだな……。
絶望の瞬間だった。



