私は斎川風菜。
ごく普通の高校2年生。
今は学校に帰る途中なんだ。
私の通う学校は女子はブレザーにリボン、男子はネクタイ。
制服が可愛いって有名な学校なんだ。
「よいしょっ」
私は家に帰る途中にある坂を自転車で登る。
「風菜ちゃん、今日も元気だね〜」
そう言って笑うのは私の家の近くに住んでいる近所のおばちゃんだ。
昔から仲良くさせてもらってるんだ。
自転車のブレーキを握って止まる。
「おばちゃん、こんにちは」
「こんにちは」
おばちゃんはいつも庭に出て私が帰る時間、花の手入れをしている。
「風菜ちゃん、こんにちは」
おばちゃんが手入れをする花はいつも綺麗だ。
花壇には沢山の花が植わっていて季節によって花の種類が変わる。
いつも通るのが楽しみなんだ。
「風菜ちゃん、彼氏できたかね?」
おばちゃんはいつもいたずらな笑顔を私に向けてそう聞く。
「おばちゃん、私に彼氏ができると思う?」
私がそう聞くとおばちゃんは、遠くを見て
「恋の始まりは唐突だよ」
そう言った。
「?」
恋の始まりは唐突……?
私の頭に『?』が浮かんだのに気づいたおばちゃんは
私の目を見て、微笑んだ。
「ほら、十六歳になれば大体、運命の人に出会ってるって言うだろ?」
「そんなことあるの?」
私とおばちゃんは笑った。
すると、スマホの通知音が鳴った。
『風菜、早く家に帰ってきて。話したいことがあるの』
話したいこと……?
「風菜ちゃん、もうそろそろ帰りな」
おばちゃんがどこからか持ってきたクッキーを私に渡してくれる。
「おばちゃん、ありがとー!また、来るね」
私はおばちゃんに手を振った。