【風菜 side】
昨日の夜はあまり眠ることが出来なかった。
ソファーに押し倒されて。
髪にキスをされて。
もっとしてほしいと思って。
「おはよう」
現在の時刻、六時三十分。
いつもより三十分早く起きた。
「風菜、おはよう。今日、早いね」
エプロンを着けた楓くんが私の方を見る。
朝ご飯を作っているようだ。
私は、楓くんがいつもと同じ様子でびっくりした。
昨日あんなことがあったのに。
『僕……足んないの』
『風菜にもっと触れたい』
思い出すだけで顔が真っ赤になりそうだ。
だけど、楓くんは気にしてないみたい、多分……。
「もうすぐ出来るから、座ってて」
楓くんがニコッと微笑む。
胸がドキンっと鳴った。
そして、ドキドキと胸が鳴り止まない。
いつもと同じなのに、いつもと同じじゃない。
椅子に座って胸に手を当てる。
聞こえてくるのは、ドキドキという胸の音。
何なのだろう、この気持ちは。
椅子に座って待つ時間がとても長く感じる。
楓くんともっと話したい。
私の方を見て笑ってほしい。
この気持ちの名前を私は知らない。



