「バラードかよ」
そう突っ込めば友里は「なんだかいいね♪亜紀に歌っているみたい」なんて嬉しそうにしていて
隣で熱唱されてる亜紀はと言うと、画面をじっと見つめて目を潤ませ完全に世界が違うところにいる。
隼人も本気なんだな……
と今更ながらに気がつくと、俺はなぜかそんな隼人が初めて羨ましくも思った。
女は嫌いだ
だからと言って女と付き合わない俺は矛盾していると隼人はいつも口すっぱく言うが、俺は矛盾しているとは思っていない。
俺は愛を求めてくる女に少なからずいい思いを提供しているのだから
だけど、俺はきっと女のケツを追いかけることなど一生ないだろう
愛だとか恋だとか、そんなもんがとにかく嫌いだから
愛なんてものは人間を簡単に壊してしまう
幸せも一瞬で奪う
だったらそんなもの感じない方がマシだと思っている。
実際に今までそう感じたことすらない俺は人を愛することはできないと思っている。
「隼人クン、なんか気持ちがこもっていて上手かったね」
気がつけば、友里がそんなことを俺に問うて来て俺は別に真剣に聞いていたわけでもないのに「ああ」なんて答えていた。
今俺が考えていたことを否定してしまえば、目の前にいる隼人と亜紀を否定することになる
そして、そんな二人を羨ましいと言っていた友里までも……
「もう、隼人最高だよぉ~上手すぎる」
間奏が流れ終わった静かな部屋にその亜紀の声がキンキン聞こえてくると、それに対抗するように携帯の着信音が俺のポケットから鳴り響いた。



