いよいよ石家先生と会う金曜日が来た。前日に以前持って行ったネイビーのショルダーバックに以前と同じように荷造りをしてしっかり用意をした。朝は緊張からスッキリと目が覚めて布団から出た。まだ冬の寒さがあるので布団から出たときにヒヤッとしたが、すぐに洗面所へ行き顔を洗い、髪の毛をブラシでといた。鏡に映る自分の顔は多少浮腫んでいた。
「よし、今日はまたあの彼に会える日なんだからね!しっかり!」
鏡に映る自分の顔に小声で語り掛け、自分なりに気合を入れた。2階に上がり自室に戻ってクローゼットから黒色のロングニットワンピースとモスグリーンのダッフルコートを出して着替えた。
「ねぇ、今日は仕事終わってから一旦家に帰るね。その後駅まで送ってくれる?」
私は1階に降りて台所にいる母親に向かって言った。母親には事前に「また東京にいる友達の家に泊りに行く。」と嘘の説明していた。
「わかったけど……またその友達に迷惑かけないようにしなよー。」
母親は少し怒った感じで返事をした。
「わかったよ。じゃ、行ってくるね。」
私はそう言って玄関のドアを開けて車に乗り込んだ。
勤務中、私は石家先生にまた会うことで頭がいっぱいだった。点滴を刺しているときや採血をしているときはさすがに集中していたが、カルテに看護記録を書いているときや、温度版に赤青鉛筆で体温や脈拍を記入しているときなんかは頭の中は石家先生の顔でいっぱいになっていた。
16:30になり、時間ピッタリに勤務終了してから、私は「お疲れ様で~す!」と日勤者へ挨拶をしてから一目散で更衣室へ向かい、着替えて弾丸のように駐車場へ向かって車に乗り込んだ。
急いで自宅へ戻り、母親に頼んで車でK駅まで送ってもらった。
「その友達に迷惑かけないようにしなさいよ!」
母親はやはり感心しないような少し怒った口調で言ってきた。
「わかったわかった!じゃあ行ってくるね!」
私はショルダーバックを左肩にかけて車から出てドアをバタンと閉めた。
時計の針は17:20を回っていた。17:40発の快速電車に乗るのに改札口を出てホームに立った。電車を待っている間、少しずつ緊張の波が押し寄せてくる感じで徐々に胸の奥がトクトク鳴ってきた。電車が来て、乗り込むと、ボックス席に数人の若者や制服姿の学生たちが立っており、中高年の男女がまばらに座っていた。私はボックス席の窓際に座りショルダーバックを膝に抱えた。
(今晩はどんな感じで先生と過ごせるかなぁ……またこの間みたいにステキな夜を過ごせるかなぁ……でも向こうで他に好きな人ができたなんて聞いたらどうしよう……まさかそんなことないよね!)
車窓に映るネイビーな夜空の下で輝く建物の窓から漏れる明かりやお店のネオンを見ながらそんな思いが頭の中を駆け巡っていた。
電車が終着U駅の手前2番目のM駅に到着したとき、車内アナウンスが流れた。
「現在~M駅~N駅間で人身事故がありました。発車までしばらくお待ちください。」
(えっ?人身事故?不吉だわぁ……)
私は暗がりの風景が広がる車窓をジッと眺めていた。胸の片隅にある小さな不安のチクチクがどんどん大きくなってきた感じがした。
(石家先生にちゃんと会えるかな……もしも最悪な展開があったらどうしよう……)
30分くらい経過しても電車はまだM駅に停車したままだった。待てど待てど出発しない。
(人身事故だから処理に時間がかかているのかな……いつまでかかっているのかな……お願いだから早く出発してよ~!)
私はショルダーバックをギュッと抱え、暗がりの車窓を眺めながら心の中で叫んだ。緊張と徐々に募る不安が入れ混じっていて、胸の高鳴りがトクントクンからドキドキと強くなってきた。
結局M駅には45分間停車していた。電車が発車したころには19:20を過ぎていた。
(やっと出発したけど……待ち合わせにかなり遅れちゃう……)
私はやっと電車が出発してホッとした半面、待ち合わせ時間を超えてしまったことに焦りを感じた。
S駅に到着してからはドキドキしながら西口めがけて小走りで駅構内を突き抜け、目的地の西口改札口を通過したのは20:00を回っていた。石家先生との待ち合わせは19:00にて大幅に遅れてしまった。
(着いた~!先生、かなり待っているよね……)
私は改札口を出て周囲を見渡した。でも石家先生の姿はどこにも見当たらなかった。
「あれ?……先生どこにいるの?」
私は西口前を端から端まで歩いて石家先生を探したがやはり姿は見えなかった。
「先生来てない……どうしたのかな……忙しいのかな……」
私はショルダーバックのストラップをグッと両手で握り閉めながら改札口前に立ってジッと待った。不安で胸がグッと締め付けらるような息苦しい感じが襲ってきた。胸からのドキドキ鼓動が更に強くなり、耳元まで響いてくるのを感じた。
「もしかして、忘れちゃったかな……」
私はドキドキした胸を右手で抑え、何度も西口前を見渡した。不安な心をグッと抑え、何度も何度も見渡した。ドキドキドキドキと耳元まで鼓動が響いているのを感じながら。
西口前をウロウロ歩き回ったり、真ん中でジッと立ってみたり、いろいろしていて30分近く待っていたと思う。腕時計を見ると、20:30過ぎていた。顔の頬と手の指先がジンジンと冷たくなっていた。
「先生、お仕事で来れなくなっちゃったかな……どうしよう……」
私は石家先生に会えなくなるんじゃないかという不安と、もし会えなかったらどんな顔をして家に帰ればいいんだろうかという思いが頭の中を駆け回っていた。胸がドキドキと強く鳴り続け、不安がググッと強く圧し掛かってきてしまい、私はショルダーバックをギューッと抱えながらその場でしゃがみ込んでしまった。両方の目頭がジワァーっと熱くなり今にも涙目になりそうだった。
「よし、今日はまたあの彼に会える日なんだからね!しっかり!」
鏡に映る自分の顔に小声で語り掛け、自分なりに気合を入れた。2階に上がり自室に戻ってクローゼットから黒色のロングニットワンピースとモスグリーンのダッフルコートを出して着替えた。
「ねぇ、今日は仕事終わってから一旦家に帰るね。その後駅まで送ってくれる?」
私は1階に降りて台所にいる母親に向かって言った。母親には事前に「また東京にいる友達の家に泊りに行く。」と嘘の説明していた。
「わかったけど……またその友達に迷惑かけないようにしなよー。」
母親は少し怒った感じで返事をした。
「わかったよ。じゃ、行ってくるね。」
私はそう言って玄関のドアを開けて車に乗り込んだ。
勤務中、私は石家先生にまた会うことで頭がいっぱいだった。点滴を刺しているときや採血をしているときはさすがに集中していたが、カルテに看護記録を書いているときや、温度版に赤青鉛筆で体温や脈拍を記入しているときなんかは頭の中は石家先生の顔でいっぱいになっていた。
16:30になり、時間ピッタリに勤務終了してから、私は「お疲れ様で~す!」と日勤者へ挨拶をしてから一目散で更衣室へ向かい、着替えて弾丸のように駐車場へ向かって車に乗り込んだ。
急いで自宅へ戻り、母親に頼んで車でK駅まで送ってもらった。
「その友達に迷惑かけないようにしなさいよ!」
母親はやはり感心しないような少し怒った口調で言ってきた。
「わかったわかった!じゃあ行ってくるね!」
私はショルダーバックを左肩にかけて車から出てドアをバタンと閉めた。
時計の針は17:20を回っていた。17:40発の快速電車に乗るのに改札口を出てホームに立った。電車を待っている間、少しずつ緊張の波が押し寄せてくる感じで徐々に胸の奥がトクトク鳴ってきた。電車が来て、乗り込むと、ボックス席に数人の若者や制服姿の学生たちが立っており、中高年の男女がまばらに座っていた。私はボックス席の窓際に座りショルダーバックを膝に抱えた。
(今晩はどんな感じで先生と過ごせるかなぁ……またこの間みたいにステキな夜を過ごせるかなぁ……でも向こうで他に好きな人ができたなんて聞いたらどうしよう……まさかそんなことないよね!)
車窓に映るネイビーな夜空の下で輝く建物の窓から漏れる明かりやお店のネオンを見ながらそんな思いが頭の中を駆け巡っていた。
電車が終着U駅の手前2番目のM駅に到着したとき、車内アナウンスが流れた。
「現在~M駅~N駅間で人身事故がありました。発車までしばらくお待ちください。」
(えっ?人身事故?不吉だわぁ……)
私は暗がりの風景が広がる車窓をジッと眺めていた。胸の片隅にある小さな不安のチクチクがどんどん大きくなってきた感じがした。
(石家先生にちゃんと会えるかな……もしも最悪な展開があったらどうしよう……)
30分くらい経過しても電車はまだM駅に停車したままだった。待てど待てど出発しない。
(人身事故だから処理に時間がかかているのかな……いつまでかかっているのかな……お願いだから早く出発してよ~!)
私はショルダーバックをギュッと抱え、暗がりの車窓を眺めながら心の中で叫んだ。緊張と徐々に募る不安が入れ混じっていて、胸の高鳴りがトクントクンからドキドキと強くなってきた。
結局M駅には45分間停車していた。電車が発車したころには19:20を過ぎていた。
(やっと出発したけど……待ち合わせにかなり遅れちゃう……)
私はやっと電車が出発してホッとした半面、待ち合わせ時間を超えてしまったことに焦りを感じた。
S駅に到着してからはドキドキしながら西口めがけて小走りで駅構内を突き抜け、目的地の西口改札口を通過したのは20:00を回っていた。石家先生との待ち合わせは19:00にて大幅に遅れてしまった。
(着いた~!先生、かなり待っているよね……)
私は改札口を出て周囲を見渡した。でも石家先生の姿はどこにも見当たらなかった。
「あれ?……先生どこにいるの?」
私は西口前を端から端まで歩いて石家先生を探したがやはり姿は見えなかった。
「先生来てない……どうしたのかな……忙しいのかな……」
私はショルダーバックのストラップをグッと両手で握り閉めながら改札口前に立ってジッと待った。不安で胸がグッと締め付けらるような息苦しい感じが襲ってきた。胸からのドキドキ鼓動が更に強くなり、耳元まで響いてくるのを感じた。
「もしかして、忘れちゃったかな……」
私はドキドキした胸を右手で抑え、何度も西口前を見渡した。不安な心をグッと抑え、何度も何度も見渡した。ドキドキドキドキと耳元まで鼓動が響いているのを感じながら。
西口前をウロウロ歩き回ったり、真ん中でジッと立ってみたり、いろいろしていて30分近く待っていたと思う。腕時計を見ると、20:30過ぎていた。顔の頬と手の指先がジンジンと冷たくなっていた。
「先生、お仕事で来れなくなっちゃったかな……どうしよう……」
私は石家先生に会えなくなるんじゃないかという不安と、もし会えなかったらどんな顔をして家に帰ればいいんだろうかという思いが頭の中を駆け回っていた。胸がドキドキと強く鳴り続け、不安がググッと強く圧し掛かってきてしまい、私はショルダーバックをギューッと抱えながらその場でしゃがみ込んでしまった。両方の目頭がジワァーっと熱くなり今にも涙目になりそうだった。
