食事を終えて私たちはエレベーターに乗って1階に降り立った。ビルの出入り口から外へ出ると再び冷たい外気が顔面にぶつかってきた。
「うぅ~寒いねぇ~!」
石家先生は肩をすぼめ背を丸めた。
「俺の家に行く?」
石家先生は前のほうを見ながらそっと聞いてきた。
私の胸は思いっきりドキッとした。今までで一番ドキッとした瞬間だった。
「はい……」
私は、ハニカミながら返事をした。石家先生はS駅を出たときと同じように左手でそっと私の右手を握り先生の赤いダウンジャケットの左ポケットに入れて歩き出した。私の胸はドキドキドキと高鳴っていた。体中から幸せホルモンなのか、カァーっと火照って駆け巡っている感じがした。1月の夜の寒空の下、高層ビルの隙間風が顔面を直撃して寒さが一層増しているにもかかわらず、私の体は明らかに火照っているのを感じた。
(私、今最高に幸せ……このまま時が止まればいいのに……)
もうこのことを何度考えたことか。寒空の下、頭の中は幸せモード全開でお花畑にいるような感じたった。ビル街の中、二人手を繋ぎ背中を丸めながら歩き進んだ。
「ここからはタクシーで行こう。」
「はい。」
石家先生が道沿いで立ち止まり右手を挙げた。「空席」と表示のあるタクシーが1台目の前に留まった。私たちはタクシーの後部座席に乗り込んだ。タクシーの車内は暖房が効いていて心地よい暖かさだった。その暖かさに緊張している身体が徐々にほぐれてくるのを感じた。
「S5丁目までお願いします。」
後部座席に乗り込んですぐに石家先生が運転手へ行先を伝えた。
「かしこまりました。」
中高年の色黒でやせた、白髪交じりの男性運転手が穏やかな口調で返事をしてハンドルを回した。
(先生はどんな家に住んでいるんだろう……)
「先生の自宅は本院の近くですか?」
タクシーが走り出して数分後、私は石家先生の顔を見ながら質問をしてみた。
「うん。まぁ、なるべく近くのほうが緊急時の呼び出しが来ても早く病院に着くからね。」
石家先生は真顔で答えた。タクシーは真夜中の漆黒の中で所々点々と光輝き立ち並ぶ都心の高層ビルたちの間を走り抜けた。私はドキドキとワクワクした心を抑え、すかした顔で車窓に映る高層ビルたちを眺めていた。暗がりからT*大学病院の白い建物が見えてきた。タクシーは病院の近くを走り抜け、道沿いにはアパートやマンションが何件か立ち並んでいる地域へ入っていった。車内では、運転手が前に座っているのもあり、私たちはしばし沈黙した。
「あ、運転手さん、そこのアパートの前で降ります!」
石家先生は運転手に声をかけた。タクシーはとあるアパートの前で停まった。タクシーの車内が心地よい暖かさのため、降車したとたんにまた冷たい外気が顔面を直撃した。
「うぅ~寒いねぇ~!」
石家先生は肩をすぼめ背を丸めた。
「俺の家に行く?」
石家先生は前のほうを見ながらそっと聞いてきた。
私の胸は思いっきりドキッとした。今までで一番ドキッとした瞬間だった。
「はい……」
私は、ハニカミながら返事をした。石家先生はS駅を出たときと同じように左手でそっと私の右手を握り先生の赤いダウンジャケットの左ポケットに入れて歩き出した。私の胸はドキドキドキと高鳴っていた。体中から幸せホルモンなのか、カァーっと火照って駆け巡っている感じがした。1月の夜の寒空の下、高層ビルの隙間風が顔面を直撃して寒さが一層増しているにもかかわらず、私の体は明らかに火照っているのを感じた。
(私、今最高に幸せ……このまま時が止まればいいのに……)
もうこのことを何度考えたことか。寒空の下、頭の中は幸せモード全開でお花畑にいるような感じたった。ビル街の中、二人手を繋ぎ背中を丸めながら歩き進んだ。
「ここからはタクシーで行こう。」
「はい。」
石家先生が道沿いで立ち止まり右手を挙げた。「空席」と表示のあるタクシーが1台目の前に留まった。私たちはタクシーの後部座席に乗り込んだ。タクシーの車内は暖房が効いていて心地よい暖かさだった。その暖かさに緊張している身体が徐々にほぐれてくるのを感じた。
「S5丁目までお願いします。」
後部座席に乗り込んですぐに石家先生が運転手へ行先を伝えた。
「かしこまりました。」
中高年の色黒でやせた、白髪交じりの男性運転手が穏やかな口調で返事をしてハンドルを回した。
(先生はどんな家に住んでいるんだろう……)
「先生の自宅は本院の近くですか?」
タクシーが走り出して数分後、私は石家先生の顔を見ながら質問をしてみた。
「うん。まぁ、なるべく近くのほうが緊急時の呼び出しが来ても早く病院に着くからね。」
石家先生は真顔で答えた。タクシーは真夜中の漆黒の中で所々点々と光輝き立ち並ぶ都心の高層ビルたちの間を走り抜けた。私はドキドキとワクワクした心を抑え、すかした顔で車窓に映る高層ビルたちを眺めていた。暗がりからT*大学病院の白い建物が見えてきた。タクシーは病院の近くを走り抜け、道沿いにはアパートやマンションが何件か立ち並んでいる地域へ入っていった。車内では、運転手が前に座っているのもあり、私たちはしばし沈黙した。
「あ、運転手さん、そこのアパートの前で降ります!」
石家先生は運転手に声をかけた。タクシーはとあるアパートの前で停まった。タクシーの車内が心地よい暖かさのため、降車したとたんにまた冷たい外気が顔面を直撃した。
