「お腹空いたね。どこかで食事しようか。」
石家先生は前を向いたまま、言ってきた。繋いだ手はダウンジャケットの左ポケットの中でポカポカ温まっていた。
「どこか美味しいところありますか?先生のおススメの所とか。」
私は冷たい風で顔を少ししかめつつ、変わらず必死に大股を広げて先生の歩く速度に合わせていた。
「そうだな……じゃあ、このビルに美味しいお店があるんだよ。そこでいい?」
石家先生は長い右腕を右斜め前に出してその先にある高層ビルを指さした。それはS区で有名なMビルで、ビルのほとんどの窓は明かりが灯っていて夜空にピカピカと輝いていた。
「ぜひぜひ!そこに行きましょう!楽しみです!」
私は声を弾ませて言った。顔は冷たい風でガチガチだけど、口角は思いっきり上がっていてニヤニヤしていた。
(先生おススメの美味しいお店ってどんなお店なんだろう……楽しみ!)
S駅西口を出て数分後、私たちはMビル入り口前に到着した。自動ドアで1階フロアに入ると、夜風の冷たさから解放され、少しホッとした。数人のサラリーマンが既に入っているエレベーターに乗り、49階で降りた。その階はレストランフロアになっており、洋食・和食・中華と高級そうなレストランが数店ズラリと並んでいた。
「ここでいい?」
石家先生があるレストランを指さした。それは高級感漂う洋食のレストランだった。
「いいですよ!」
私は弾んだ声で返事をした。私たちはその洋食のレストランへ向かって並んで歩き出した。
「いらっしゃいませ~何名様ですか?」
お店に入ると、黒い蝶ネクタイのタキシード姿で黒髪をビッチリ七三分けにした男性店員が出てきた。
「2名です。」
石家先生が右手ピースで“2”と示しながら答えると、男性店員は「どうぞ」と店内の中央にある丸型のテーブル席に案内された。私は顔を左右にゆっくりと店内を見回しながらテーブル席に着いた。店内は老若男女多くの客でテーブルが埋まっており、あちこちのテーブルで談笑する賑やかな声が聞こえていた。夜景が一望できる窓際のテーブルは当然埋まっており、私たちと同世代の男女、中高年の男女カップルたちがそれぞれ笑顔で見つめ合って会話を交わしていた。
(窓際いいなぁ~)
できれば石家先生とキレイな夜景を眺めて「きれいだね~」とロマンティックな気分を味わいながら食事がしたかったけど、まぁ仕方がない。
私たちは中央の丸テーブルに向かい合わせで座った。
「あー腹空いてきたぁ~。何食べようかな~。」
石家先生は店員から配られた温かいお絞りで両手を拭きながら爽やかな笑顔でメニューを開いた。
「お腹空きましたねぇ~。どれ食べようかなぁ~。」
私も温かいお絞りで冷えた両手(右手は石家先生の温もりがほんのり残っているけど)をぐりぐり拭きながらメニュー表を開いて見た。メニューは定番のものから高級魚介類を使って多分凝っているんだろうなぁ~と思うものまでいろいろあった。
(ハンバーグもいいなぁ……でもパスタも食べたいし……あっ、ドリアもいいなぁ……)
石家先生との再会でドキドキしていると同時に空腹感も強くなっている私は、何でも食べられる感じだった。メニューを片っ端から見ていき、どれか一つに絞るのにかなり迷った。
「何食べるか決まった?」
石家先生がジッとメニューを見ながら聞いてきた。
「あ……はい……」
本当はまだ決まっていないのに、私は思わず返事をしてしまった。
「じゃあ、注文するよ。」
石家先生は右手を挙げて店員を呼んだ。
石家先生は前を向いたまま、言ってきた。繋いだ手はダウンジャケットの左ポケットの中でポカポカ温まっていた。
「どこか美味しいところありますか?先生のおススメの所とか。」
私は冷たい風で顔を少ししかめつつ、変わらず必死に大股を広げて先生の歩く速度に合わせていた。
「そうだな……じゃあ、このビルに美味しいお店があるんだよ。そこでいい?」
石家先生は長い右腕を右斜め前に出してその先にある高層ビルを指さした。それはS区で有名なMビルで、ビルのほとんどの窓は明かりが灯っていて夜空にピカピカと輝いていた。
「ぜひぜひ!そこに行きましょう!楽しみです!」
私は声を弾ませて言った。顔は冷たい風でガチガチだけど、口角は思いっきり上がっていてニヤニヤしていた。
(先生おススメの美味しいお店ってどんなお店なんだろう……楽しみ!)
S駅西口を出て数分後、私たちはMビル入り口前に到着した。自動ドアで1階フロアに入ると、夜風の冷たさから解放され、少しホッとした。数人のサラリーマンが既に入っているエレベーターに乗り、49階で降りた。その階はレストランフロアになっており、洋食・和食・中華と高級そうなレストランが数店ズラリと並んでいた。
「ここでいい?」
石家先生があるレストランを指さした。それは高級感漂う洋食のレストランだった。
「いいですよ!」
私は弾んだ声で返事をした。私たちはその洋食のレストランへ向かって並んで歩き出した。
「いらっしゃいませ~何名様ですか?」
お店に入ると、黒い蝶ネクタイのタキシード姿で黒髪をビッチリ七三分けにした男性店員が出てきた。
「2名です。」
石家先生が右手ピースで“2”と示しながら答えると、男性店員は「どうぞ」と店内の中央にある丸型のテーブル席に案内された。私は顔を左右にゆっくりと店内を見回しながらテーブル席に着いた。店内は老若男女多くの客でテーブルが埋まっており、あちこちのテーブルで談笑する賑やかな声が聞こえていた。夜景が一望できる窓際のテーブルは当然埋まっており、私たちと同世代の男女、中高年の男女カップルたちがそれぞれ笑顔で見つめ合って会話を交わしていた。
(窓際いいなぁ~)
できれば石家先生とキレイな夜景を眺めて「きれいだね~」とロマンティックな気分を味わいながら食事がしたかったけど、まぁ仕方がない。
私たちは中央の丸テーブルに向かい合わせで座った。
「あー腹空いてきたぁ~。何食べようかな~。」
石家先生は店員から配られた温かいお絞りで両手を拭きながら爽やかな笑顔でメニューを開いた。
「お腹空きましたねぇ~。どれ食べようかなぁ~。」
私も温かいお絞りで冷えた両手(右手は石家先生の温もりがほんのり残っているけど)をぐりぐり拭きながらメニュー表を開いて見た。メニューは定番のものから高級魚介類を使って多分凝っているんだろうなぁ~と思うものまでいろいろあった。
(ハンバーグもいいなぁ……でもパスタも食べたいし……あっ、ドリアもいいなぁ……)
石家先生との再会でドキドキしていると同時に空腹感も強くなっている私は、何でも食べられる感じだった。メニューを片っ端から見ていき、どれか一つに絞るのにかなり迷った。
「何食べるか決まった?」
石家先生がジッとメニューを見ながら聞いてきた。
「あ……はい……」
本当はまだ決まっていないのに、私は思わず返事をしてしまった。
「じゃあ、注文するよ。」
石家先生は右手を挙げて店員を呼んだ。
