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「お客さん!ちょっと!大丈夫?お客さん?」

駅員さんの声で目が覚めた。私の肩をトントン叩いて何度も呼びかけてくれていたらしい。

「あ、、すみません!」

最初目を開けた時何が起こったのか分からなくて3秒くらい経ってから理解して、思わず立ち上がってしまった。家まで帰れるのか心配してくれている駅員さんに「大丈夫です。ありがとうございます、すみませんでした」と伝えて、二駅先の自分の家までゆっくり歩いて帰った。
家に着いて、携帯を見ると翔平から電話が入っていた。本当だったら、私が家に着くはずの時間くらいに電話が来ていたから、もうかなり前だ。明日もどうせ会うしと思い、かけ直しはやめて「今日はありがとう。電話気づかなくてごめんね」とメッセージを送った。
寝る準備をしようと、テーブルの上に携帯を置いた瞬間、電話の着信音がした。

「おい!心配しただろ。いま家?」

電話に出ると、翔平の怒った声が聞こえた。

「え。翔平君、、?うん。今家だよ。ごめん。寝過ごしちゃってさ、帰るのに時間かかっちゃったんだ」

「や、、あの、なんていうの、だからさ家ならよかったんだよ。その、強く言ってごめんな」

「や、私もごめん。電話ありがとうね。バイバイ」

そう言って電話を切った。
まさか、こんな時間まで起きてたなんて。
翔平君の事をもっと知りたい。そう思ったのは彼が亮太の弟だから。亮太に会わせてくれる人だから。それだけだよね。別にやましい事なんて何一つないはずなのに、この気持ちはバレてはいけない。隠さなくてはならないと思った。でも借りたパーカーの温もりが消えるまではこのままでいさせてねと夜空を見上げながら神様に告げた。私は今どんな顔をしているのか私に知られないようにそのパーカーに顔をうずめた。

今、私の中の筆洗バケツは何色で染まっているのだろう。自分でもわからなくなるように蛇口をひねって、水を溢れさせていた。いっぱいになって、どんどんどんどん流れ出ていく。透明になったのを確認して、水を止めた。