その気持ちを隠したくて、亮太の右肩をおもいっきり叩いて誤魔化した。

「どんなイメージだよ」

「まぁまぁ」

それから、2人でキャンディーを食べながら私の家まで歩いた。ニヤニヤがバレないように、亮太の斜め後ろを歩きながら。

「あ、ありがとう。また明日ね。」

3個目のキャンディーの包み紙が胸のポケットに入った時、家の前に着いて亮太にお別れを言って中に入ろうとした。一歩踏み出した瞬間、手首を掴まれた。
振り返ると、耳を真っ赤にしている亮太がいる。一瞬、2人だけの世界に溶け込んだようにさっき食べたキャンディーの包み紙が私達を隠してくれている。
私が首を傾げて見つめていると、右耳を触っている亮太が言った。

「あ、あのさ。俺、ずっと幸子が好きだったんだ。だから、チョコレートもらった時も本当嬉しかった。友チョコとかかもしれないけど。でも、もしよかったら友達からでもいいから、その、仲良くしてほしいっていうかさ」

時間がこのまま止まればいいと思った。お願いだから誰もここを開けないで。強く捻って、細く硬くして諦めて。それを逆側に捻ろうとしている人がいたら、私は間違いなく嘘をついてもっと細くするだろう。
ずっと下を向いたまま話している亮太がどんな顔をしているのか気になって、しゃがんで覗き込んだ。

「なんだよ」

そう言って、そっぽを向かれてしまった。

「あのね、私もこのまま話せなくなるの嫌だなって思ってたよ?」

気持ちを伝えると、やっとこっちを向いてくれて目があった。彼もしゃがみこんで両手を掴んで言った。

「あのさ、俺と付き合って欲しい」

まっすぐな亮太の瞳が輝いていて眩しかったけど、ずっと見ていたいと思った。

「うん。お願いします」

亮太の瞳に負けないように笑顔で返した。
「よっしゃあー!」と両手でガッツポーズをして喜んでいる亮太がとても愛おしいと思った。口元に手を当てて笑っていると彼の真剣な目が私を動けなくさせた。
亮太が私の両肩を掴んで、キスをした。
恥ずかしくて嬉しくて、もどかしいのを夕焼けのせいにして2人で笑い合った。

はじめてのキスは、レモンの味だった。