タツナミソウ

肉じゃがは1番最初にも作ったし、今となっては私は結構料理ができる方なのにな。亮太に「何食べたい?」と聞くと毎回のように肉じゃがと返ってくる。今までは、前も食べたから違うものにしてほしいなとお願いしてきたけど、ここまで言われるとまた作ってもいいのかなと思ってしまう。私の料理を色々な種類を食べてもらいたいっていう気持ちに間違いはない。だけど正直、いつ亮太がいなくなるのかわからないから、少しでも多くの料理を作って、少しでも沢山の物を食べて欲しいと言うのが私の本音だ。これは絶対本人には言えないし、翔平君にも言える事じゃないけど、、。もう夢見る少女じゃないし、流石にたまに現実を見る事もある。亮太と会っている時点で夢見てんじゃんとか言われたらそれまでだけれども。
近いからと言いながら額に手を当てて亮太を遠ざけた。そうすると、彼はまた携帯で何かを調べ始めた。別に見られて困る物もないしいくらでも使ってくれて構わないのだけど、一応それは私の携帯なんだけどなとは思った。亮太だから許すけど、一般的に彼女の携帯電話をこんなにずっと使っている彼氏っていないよなと笑えてきた。

「え?何笑ってんの?」

「や、だってさ、普通さ、か、、、えっと、、カタログ!そんなに遊園地のカタログなんて見る人いないよ!」

「んー。これでカタログっていうより、パンフレットじゃね?まあ、どっちでもいいけど、今は違うの見てるよ。ほら!」

こちらに寄せられたその画面には、#ピクニックお弁当と検索されている。サンドウィッチとかピンチョスのようなピックに刺された赤とか緑とか、片手で食べられてオシャレな物しか載っていない。昔はそこまで手が回らなくて、遠足には似つかないお弁当を作ってしまったけど、よく考えたら遊園地とかも片手で食べられる物の方が楽だし良いよな。いやいや。感心して忘れかけてるみたいだけど、カタログってありえないだろ。心の中で自分にノリツッコミを入れた。苦し紛れすぎたけど、亮太が気づいていないからセーフなのかな?本当は彼女って言おうとしたのに、つまってしまった。それで気がついた。私、亮太の彼女だって胸を張って言えない事に。ありえない事だから周りに言えないとかそういうのじゃなくて、自分自身が亮太の彼女だっていうのに自信がないのだからだと思う。私って亮太に好かれているのかな?とたびたび思ってしまう事がある。うまく言えないけど愛情表現が少ないとか、亮太が悪いわけじゃなくて、なんとなく違う感?あの当時は正直すごく愛されているなってのがビシビシ伝わってきた。けど最近は、好きだよとか言われると嬉しいけど何故か不安とか寂しさとかそういう感情が隠せなくなっている。どうしてかはわからない。