「最近会食の予定を詰め過ぎじゃないか?」
「そうですか?」
「……千花の飯が食いたい」
ここ最近の颯真は九州にあるターミナル駅直結の複合施設を誘致するプロジェクトに関わっており、出張や会食が連日続いていた。
颯真がデスクを置く都市開発本部の部長席は個室とはいかないまでも仕切りがあり、多少の機密性は保たれている。
他の社員に聞かれないようにため息と共に小声で本音を漏らすと、宮城は秘書の仮面を取り去り、親友の顔をして笑った。
「清瀬亭の懐石より千花ちゃんの飯か。若奥様の料理の腕はよっぽどらしいな」
「馴れ馴れしく呼ぶな。まぁ、ご両親から無理矢理栄養学科に放り込まれて、料理学校にも通ってたからな」
「…涙ぐましい努力だな」
そう。千花は要領がいいわけではないが、決して努力を怠らない努力家だと颯真は評価している。
中学生だった千花の勉強を見てやった時もそう思ったし、婚約して以降はさらにそんな姿を垣間見ることができた。
無理矢理進路変更させられた大学の勉強も一生懸命していたし、一緒に住むようになってからは家のことを安心して任せられるほど家事もしてくれる。
颯真の立場上、社交の場に共に出ることもあるため、パーティーのたびに招待客のリストとにらめっこしているのも知っていた。



