(こんなこと言ったって、颯くん困らせちゃう…)

不安になって千花に覆いかぶさる颯真を恐る恐る見上げると、眉間に皺を寄せて、やはり不機嫌そうな顔をしている気がする。

――――失敗した。

出張から帰宅した夫を出迎えられなかっただけでなく、仕事で忙しくしていることに不満をぶつけてしまうだなんて。

「あ、ちがっ、ごめんなさい…」

慌てて颯真の胸を押し返し、上半身を起こして謝る。

決して仕事の邪魔がしたいわけでも、不満に思っているわけでもない。
そう言いたくて言葉を続けようとした千花を再び押し倒し、颯真の手が性急に服を乱していく。

「えっ、颯くん…っ?」
「千花、もう1回言って」
「え?」

首筋に唇を這わされ、カットソーが捲れ上がる。裾から這い上がってきた大きな手があっという間に胸の締め付けを解き、指先がその先端に触れた。

「や、ぁ…っ」
「俺がいなくて寂しかった?」

(言っても、いいの……?)