激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


「こんなときにからかわないで。ほんとに緊張してるのに」
「からかってない。本心だよ。これも、つけてくれて嬉しい」
「…っん」

胸元で輝くピンクの花のモチーフに触れられ、小さく吐息が漏れた。

「…本当は誰にも見せずに俺だけのものにしておきたいんだけどな」

緊張を解こうとしてくれているのは分かっているが、いくらなんでも甘すぎる。

こっちはそんな言葉を掛けられるたびに、もしかしたら自分は愛されているのではという希望が頭をもたげ、期待しすぎてはいけないと感情を諌めるのに必死にならなくてはならないというのに。

結婚してまだ2ヶ月と少し。
弥生のことを吹っ切る努力をしてくれているかもしれないとは思ったものの、2人が過ごした時間を考えれば、まだまだ時間が必要なのはわかっているつもりだ。

その証拠に、いくら甘い言葉を囁かれても『好き』だと言われたことはない。

いつかは自分を見てほしいと願ってはいるものの、あまり過剰に期待するのもダメだと心がストッパーをかける。

「でもせっかく可愛くドレスアップした千花を連れて歩けることだし、自慢しがてら挨拶に回ろうかな」
「…もう」

うつむき加減な千花の顔を覗き込みながら颯真が微笑む。