そして迎えた創立80周年記念パーティー当日。
選んでもらったドレスを着て、さらに新婚旅行中に買ってもらったジュエリーを身につけて会場へやってきた千花は、すでに緊張の渦の中にいた。
『アナスタシア』という世界の一流ホテルに並ぶ格式を持つホテルの本館の一番大きな宴会場は、まだパーティーが始まってもいないのに大勢の招待客で埋め尽くされている。
月城不動産の社員はもちろん、取引先の要人も多数来ていると聞いているので、一切気は抜けない。
眩いほどの大きなシャンデリア、真っ白なテーブルクロスの上には鮮やかな花が飾られ、奥には開始時間も近いせいかビュッフェスタイルの豪華な料理が既に並べられている。
「…す、すごいね。なんか私、場違い感が……」
さすがはあの月城不動産の創立記念パーティー。分かってはいたが、とてつもなく規模が大きい。
男女ともに正装でドレスアップした華やかな場所に気後れしそうになっていると、颯真が耳元で小さく囁いた。
「大丈夫。千花が1番綺麗で可愛い」
「……っ」
気休めとわかっていても、そんな甘い言葉を耳元で囁かれれば、否が応でもドキドキしてしまう。



