『ありがとうございました』


その言葉だけを置いて、春香さんはナースステーションを去った。


七海先生に続いて春香さんまで…しかもあまりに突然で驚いた。


私は、帰ろうとしていた春香さんを追いかけた。


少し話したいと言うと嫌な顔をされたけど…


結局、中庭で話すことになった。


『ごめんなさい。無理やりで』


今日で最後だと思うとどうしても聞いておきたかった。


春香さんが辞める理由を。


『何ですか?』


『春香さん、看護師辞めてこれからどうするの?好きな仕事だったんじゃ…』


『あなたには関係ないです…でも、はっきり言います。私はこの病院にいたくないんです。あなたのいるこの病院に』


『春香さん…私のせいで辞めちゃうの?』


そんなの…悲しすぎるよ。


『そうです。これ以上、あなたの顔を見たくないから。それに…来栖さんの顔も…』