結局父さんの車に乗せられ、家を出た。
最初は駅まで行くのかなって思っていると、車はそのまま高速へ。

「駅で電車を探すのに」
「この時間じゃあるかわからんだろうが」
「でも・・・」
「いいんだ。着くまで寝てろ」

父さん・・・
なんだか胸が熱くなった。


無言の車内。
目を閉じても眠ることはできず、代わり映えのしない車窓を眺めて過ごした。

「私がずっと診てきた子なの。今行かないと会えなくなるの」
わざわざ送ってくれる父さんに、大まかな事情を説明した。
「そうか」
それ以上の返事は返ってこない。

唯ちゃんは、生まれたときからずっとベットの上で寝たきりだった。
私はご両親よりも長い時間を一緒に過ごしてきた。
だから、行かないといけない。

唯ちゃんのことを思い出しながら、ボロボロと泣いた。
父さんが背中をぽんぽんと叩いてくれた。


2時間以上かけて、病院まで着いた。

駐車場に車を止めた父さんに、
「ありがとう」
お礼を言うと、
「いいから行きなさい。どんなに遅くなってもいいから、父さん待ってるから」
必ずここに戻って来いと言われた。

「行ってきます」
しっかりと涙を拭いて、私は病棟へ向かう。