日がたつにつれ、つわりも辛くなってきた。
私は久しぶりに、実家に向かった。
幸い今日は体調が良い。
こんな時でなければ、長い時間の移動なんてできない。

私の生まれ育ったところは、隣の県。
今の家からは電車で2時間の距離で、のどかな田園風景が広がる田舎町。

ふーん、懐かしい。
ここに帰るのは1年ぶりかな。
そんなに遠いわけではないんだけれど、つい足が遠のいていた。

「お帰り、紅羽」
「ただいま」
母さんが駅まで出迎えに来てくれた。

「父さんは?」
中学教師の母さんは平日仕事のはずだから、今日は父さんが迎えに来てくれると思っていた。
「お父さん、急に葬儀が入ったのよ」
「へー」

私の実家は田舎のお寺。
父さんが15代目。
代々続くお寺は檀家さんも多くて、父さんとおじいちゃんで切り盛りしている。
私が高校までは、父さんも中学校の教員をしながらの兼業坊主だったけれど、10年ほど前に教師を辞めてお寺を継いだ。
曲がったことが大嫌いで、とても厳しい人。