病気療養の名目で2週間の休みをもらった。
このままでいけば、休み明けから次の勤務先へ異動になる予定。
妊娠の事は秘密の為、周りから見れば異動が嫌で駄駄をこねている様に見えるはず。
でも、今は仕方ない。そんな事かまっていられない。
ありがたく、静養と異動の準備をさせてもらおうと思う。
とはいえ、勤務先は隣町のため住居の引っ越しは不要。
これまで通り、翼との同居は継続する。


長期休暇のお陰で、つわりの為に弱った体をゆっくり休ませることができた。
時間を気にすることもなくゴロゴロとベットで過ごし、病院にも行き、母子手帳ももらった。
そして、自分自身と向き合った。
少しずつではあるけれど、あれだけ悩んでいた妊娠も、出産も、自然と受け入れられるようになってきた。

産婦人科は、自宅から少し離れた小さなクリニック。
知り合いに会わないことを第一条件に選んだ。

「独身ですね。生みますか?」
40過ぎの女医先生に聞かれ、
「もう少し考えます」
そう言いながら、あきらめる気はもうない。

普段小さな子供達を患者として診ている私にとって、生まれてきてくれる命は奇跡でしかない。
その命を絶つなんて・・・考えられない。
しかし、そうなると現実的な問題が出てくる。

これからどうしよう。
周りには子育てしてる女医さんも多い。
私にだって、できなくはない。
でもね・・・1人で育てていく自信は、ない。