送っていく車の中で、紅羽は眠ってしまった。

妊娠するとホルモンのバランスが変わって眠たくなることもあるらしい。
つわりも、体調の変化も人それぞれ。
一概にこうだと言えるものはない。
まあ、命を1つはぐくもうと言うんだからそれなりに体の負担は避けられない。

はあぁ、どうしたものだか。
こいつが母親になるなんて・・・想像もできない。

いつも真っ直ぐで、正直で、それでいて不器用で。
心配で目を離すことができなかった。
最初は妹を見るように見ていたのに、いつの間にか手を出していた。
近付けば近づくほど彼女の側を離れられなくなって、お互いを恋人と認識するようになった。
俺は隠したつもりはない。
二人して手をつなぎ、堂々と街を歩きたかった。
でも、余計なことを口にしない紅羽にあわせているうちに、秘密の交際のようになってしまった。
それが・・・子供ができるなんて。

「うぅんー」
助手席から紅羽の声。
微妙に幸せだな。
こんな時間をずっと過ごせたら、いいだろうなあ。

「かわいい顔して、強情な奴」