「お前、生意気なんだよ」
隣にいる私にしか聞こえない部長の声。

目の前には新しいワイングラスが差し出された。

「もう少し、女らしくしろ」
不機嫌そうに言う部長。
でも、私だってもう遠慮する気はない。

「らしくって何ですか?私、医者です」
「知ってる」
「だったら、医者に男とか女を求めないでください」
時代錯誤もいい所よ。

「お前を見てるとイライラするんだ」
グラスを空けながら吐き捨てる部長。

はあぁ?
そんなの私の知ったことじゃない。

「お前は・・・親父そっくりだ」
「は?」
今なんて?
部長なんて言った?

一瞬、私の頭が真っ白になった。

「どうして・・・」

「お前が大学に入って来たときから話題だったからな。当時を知る連中はみんな気づいてる」

「・・・」

「なんて顔だ。医者の世界の情報網をなめるんじゃない。ほら、いいから飲め」
ワインをつごうとする部長。

「いえ、もう」
「上司の命令だ飲め」
「部長」
仕方なく、私はワインを口に運ぶ。