「いいチャンスだ。少しは化けの皮をはがせ。いっつもいい顔していたんじゃ疲れるだろう」
同情的に言う公だけれど、
「先生が言っても説得力ありませんね」
やはり、翼が突っ込んだ。

いつも優しくて、患者さんにもスタッフにも人気の公だって、十分外面がいい。
翼のこと言える立場ではない。

「2人とも目くそ鼻くそね」
私なりに上手く言ったつもりだったのに、

「何だよ、もっと綺麗な表現できないのかよ」
翼がふくれる。
公は渋い表情で私を睨んでいる。

学生時代から友達が少なかった私の、唯一の親友と、初めてまともに付き合った彼氏。
2人はとても似ている。
一見人当たりが良くて、優秀で、それでいてなかなか人を信じない。
素直じゃない屈折した性格も同じ。

「紅羽、酒ばかり飲むな。ちゃんと何か食わないと体に悪いって」
「あー、枝豆の皮をテーブルに置くなー」

「も-、2人ともうるさい」
「「紅羽」」
男2人の声が重なった。

本当に、保護者が2人ついているみたい。

でもこうして、翼を気遣ってくれる公がたまらなく好き。
自分で思っている以上に、私は公に惚れている。