うえ、やっと食べた。

「はい、ごちそうさま」
お茶碗をチェックしてからビールを差し出す公。

「もー、お腹いっぱいだよ」
恨めしそうに言ってみたけれど、
「じゃあ、もう飲まない?」
「・・・飲む」

ククク。
公が笑っている。

「・・・ありがとうございます」
公のグラスにビールを注ぎながら、翼がしおらしくお礼を口にする。

「バーカ」
私達の前でしか見せない辛口の公。

なんだかんだ言って、公は翼を信頼している。
そうじゃなければ、私がここに住むことをよしとするはずがない。
端から見ればおかしな関係だけれど、私たちにとっては絶妙のバランス。
この生活を失いたくないと本気で思う。

「そういえば、救命部長は大丈夫だったの?」

翼は気づいていなかったかもしれないけれど、ずっと機嫌が悪かった。
ものすごい顔で翼のことを睨んでいたんだから。

「帰りに呼び出されて、説教された。当分ドクヘリ禁止だってさ」

はあぁ。
それは、お気の毒様。

「それってペナルティーになるのか?」
内科医の公が不思議そうな顔をする。

「まあ、俺にとっては十分なお仕置きですね」
翼はグラスのビールを一気に空けた。

確かに、救命の現場が好きな翼にとってはドクヘリに乗れないのは辛いだろうな。
救命部長もよくわかっている。