10分ほど待って、
「山形さーん」と診察室へ呼ばれた。

「どうぞ」と声をかけた公が、パソコンから顔を上げこちらを向いた瞬間
え?
驚いた顔をした。

久しぶりに公の顔を見た私はうれしくて、微笑んでしまった。

なんだかとても元気そう。
痩せた様子もないし、着ている服も綺麗にアイロンがかけられていて、清潔感がある。
自分でしたのかなあ、それとも・・・

「どうしました?」
「ええ?」
私に気づいたはずの公が、発した言葉に今度は私が驚いた。

「今日はどうされました?」
どうやら公は、医者と患者で通す気らしい。
それなら私も、付き合います。

「最近胃の調子が悪くて・・・」
「痛みがありますか?」
「はい」
「それは、空腹時?」
「うーん、気がつけばって感じなので・・・」
「どの辺りが痛みますか?」
「えーっと、この辺?」
胃の辺りをさすってみた。

「食事はとれていますか?」
「はい」

ところでこの小芝居、いつまで続ける気だろうか?
もしかして、公は怒ってる?
だんだん不安になってきた。