数日後。
我慢の限界を迎えた私は、有休を取った。

今まで仮病で休んだことなんて学生時代から思い出してもなかったのに、『すみません、風邪で休みます』と嘘をついてしまった。

そして、私が向かったのは山の中の診療所。
ガタガタの田舎道。
緑深い山里。
時々来るには最高の場所。
でも、暮らすとなるとどうなんだろうか・・・こんな所に公はいるのね。


ひたすらカーナビだけを信じ、やっとたどり着いた古びた診療所。

「こんにちは」
「はーい」と出てきた女性。
白衣を着た、若い看護師。

「診察ですか?」
「え、ええ」
もちろん診察に来たつもりはなかったけれど、ここで否定する勇気もなかった。

それに、
「最近胃の調子が悪くて」
これは嘘ではない。

受付に案内され、問診を書き、しばらく待つ。
待合には5人ほどの患者さんがいる。
確かに、老人が多い。
もし公がいなくなれば、この人たちは困ってしまうんだ。
これが僻地医療の現実とは言え、街の病院とは様子が違いすぎる。