ブブブ。
また公からの着信。

「もしもーし」

『お前、今どこ?』
抑揚のない公の声。

機嫌は良くないみたいね。

「どこって、家よ」
『自分の部屋?』
「当たり前でしょ」
他にどこがあるのよ。

もー、この忙しいときに何なの。

『昨日、何時に帰った?』

「えーっと」
覚えてない。と言えば、もめるよね。

『お前さあ、もう少し慎重に行動しろ。酔っ払ってどうやって帰ったかの記憶もないなんて、最悪だぞ』
何、この説教口調。

体調の悪さも手伝って、朝からプチンと切れてしまった。

「何で?たまに飲みに出ただけでしょ。悪いの?」
『ああ悪い。どこで誰が見ているかわからないんだから。自制しろ』

はー、意味がわからない。
自分は好きなことしてるくせに。
あっ、8時半。

「とにかく、昨日は翼と飲みに出ました。着信に気づかなかったのはごめんなさい。でも、公が何を怒っているのかわからない」
『お前・・・』
「ごめん、遅刻しそうなのよ」
私は、一方的に電話を切った。

いつも言い合いをしていたようで、大きな喧嘩をしたことのなかった私たち。
それは、わがままな私の発言を公が受け流してくれていたから。
分っていたことなのに・・・

一晩中連絡の取れない私を公が心配していた。
ふざけた翼が、酔っ払った私の写真を公に送ったのも後で聞かされた。

『心配かけてごめんなさい』と言えれば、それですんだことなのに。
意固地な私には、それができなかった。

その日から、毎晩のおやすみメールが来なくなった。
私からも、しなかった。
この時の私は、自分にとって宮城公がどれだけ大きな存在なのかということに気づいていなかった。