40分後。
運ばれてきたのは、小さいけれど元気な赤ちゃん。
てきぱきと処置し、NICUに収容した。

「山形先生担当ね」
遠くの方で部長が言ってる。
「はい」
喜んで。

NICUは嫌いじゃない。
もちろん命に関わる患者が多いから難しい側面もあるけれど、赤ちゃんは基本しゃべらないから。
顔色を気にすることもなく、治療に専念できる。

「山形先生、今週の日曜の病棟待機をお願いします」
まるで決定事項のように、部長は言うけれど、
「あの、その日は都合が・・・」
元々、部長が待機のはずだったじゃない。

「私も急な出張で不在になりますので、なんとかお願いします」
いや、だから・・・

「山形先生、都合悪かったら僕が変わりましょうか?」
と、さっき私の代わりにドクターカーに乗ってくれた山田先生。

「いいです。都合をつけます」
これ以上みんなに迷惑はかけられない。

クソッ。
部長の奴。
都合が悪いって言っていたのに・・・
今度の日曜は亡くなった父さんの命日だから、久しぶりにお墓参りに行こうと思ったのに。
絶対部長の嫌がらせよ。

その日1日、不機嫌を顔に出していた私。
幸い、今日はNICUの当番だったため無愛想を注意されることもなかった。